活路は「平和」アピール 「平泉」延期勧告 ( 2008/05/24) 河北新報
(記事抹消)http://www.kahoku.co.jp:80/news/2008/05/20080524t31035.htm
「平泉の文化遺産」の世界遺産登録は、国際記念物遺跡会議(イコモス)が登録延期を勧告したことで、実現が遠のいた印象が強い。「逆転登録」を果たした昨年の石見銀山遺跡(島根県)と同じ評価ながら、今年の遺産登録を取り巻く状況を考えると、挽回(ばんかい)するのはなかなか容易でない。
勧告内容を検討すると、文化庁の対応のまずさが真っ先に浮き彫りになる。「平泉」の問題点として、浄土思想の分かりにくさや骨寺村荘園遺跡(一関市)の農村景観の説明不足、遺産候補地の広すぎる範囲など7項目の指摘を受けている。多岐の分野にわたっており、遺産形成に取り組んできた文化庁は戦略を誤ったともいえる。
文化庁は7月の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会へ向けて戦略の練り直しを迫られるが、客観情勢は不利に働いている。
世界遺産は現在851件(うち文化遺産660件)と「飽和状態」。遺産委員会での登録率は2004年の82%から下がり続け、昨年は63%にまで落ち込んだ。
イコモスの勧告が遺産委員会で昇格したのは06年12件(全体の38%)、05年6件(13%)、04年9件(19%)にとどまる。加えて、昨年の遺産委員会で副議長国を務めた日本が、既に任期満了に伴い委員国から抜け、今回はオブザーバー参加にとどまる点もマイナス材料とされる。
あくまで本年の登録を目指すなら、登録延期の根拠となった点について、21カ国で構成する遺産委員会のメンバー国への丁寧な説明が必要だ。さらに浄土思想と並ぶもうひとつのテーマ「平和」を粘り強くアピールして活路を探らなくてはならない。石見銀山は「大規模伐採を制限し、環境へ配慮した鉱山」という点を強調し、功を奏している。
仮に遺産委員会でも登録延期となると、「登録までには3年以上かかる」(県教委)とみられている。その場合、遺産の概念を変え、実質的に新たな遺産候補として臨むことになるが、遺産候補の枠組みから外れた自治体や住民の理解は得にくいだろう。どの可能性を探っても、世界遺産への道のりは険しい。(解説=盛岡総局・高橋秀俊)
◎イコモス勧告の主な指摘
・平泉の全体配置、庭園群と浄土思想の関連性が、失われた文化的伝統、文明を伝承する存在だと証明しきれていない。
・寺院や庭園などの景観が、人類史上重要だと証明しきれていない。
・骨寺村荘園遺跡の農村景観に浄土思想が反映されていることを証明しきれていない。
・平泉の浄土思想が世界的意義を持つことを証明しきれていない。
・アジア・太平洋地域の同種遺産との比較研究が十分ではない。
・世界遺産候補の範囲について再検討が必要。
・浄土思想を基調とする文化的景観という主題と、構成する各遺産の区分の在り方について整理が不十分。
◎不足情報、整理して対応/文化庁課長一問一答
文化庁の内藤敏也記念物課長は23日、記者会見し、「平泉の文化遺産」に対して、国際記念物遺跡会議(イコモス)が出した世界遺産への「登録延期」勧告についての見解を述べた。会見内容は次の通り。
―昨年の石見銀山遺跡のケースとどう違うのか。
「詳細を見ていないため、どちらが厳しい勧告かは言えない。ただ、今回は石見銀山のような保全状況に対する細かい指摘は少なく、遺産価値に関する指摘が中心だ」
「指摘された遺産全体がどのように浄土思想を反映しているかという点は、『追加情報』で説明してきたが、十分に理解されなかった。毛越寺庭園などの復元や保全管理の考え方に関しては深刻な指摘はなかった」
―浄土思想がネックになったのか。
「日本独特の浄土思想そのものと、浄土思想がどう構成遺産に反映されているかが、十分に説明されていないということだった」
―9つの遺産を絞るべきだと指摘されたのか。
「そうだ。構成遺産の範囲を再検討すべきだというのがイコモスの考えだ」
「(われわれは)すべての構成遺産を含め、平泉の価値は世界遺産に値すると考えている。推薦書に書いた内容を少しでも理解してもらうことしか念頭にない」
―今後の活動は。
「外務省、岩手県などと相談して決める。昨年は『不足情報』を整理し、その上で外交ルートなどで世界遺産委員会の委員国のユネスコ代表部と本国に働き掛けた。今回も昨年のケースを基本に対応する」
―日本は今年、世界遺産委員会の委員国ではない。不利になるか。
「正直、委員国だった昨年より不利になる。委員国同士で情報交換できれば、外から働き掛けるより効果はある」
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